?その１?

その空は、雲ひとない青空やった・・・。

チチチチチ・・・・・
小鳥のさえずりが響く早朝。
時期は早春、この時間はまだ真冬のような寒さを感じる時間帯。
冬眠を終えた動物たちが、トコどころに顔を出して、周りの気配をうかがうわ。
そこに、朝日を浴びて元気にはしゃぐ二つのボウズの影。この寒さそやけど、ボウズは風の子なんや。
「見てみろよ?、霜柱！どエライ！！」
「春ってぬかしてもまだ寒いさかい・・・、霜柱かぁ?。」
好奇心旺盛な二人、あんまり見たことあらへんもんには寒さやなんて感じんと食いついてみせるちうわけや。
「ひっひっひ！元気でええこった！元気なうちに遊べるだけ遊んどけ?！」
体つきのええ男がちびっと離れたトコから呼びかけるちうわけや。
「あ、おとん?！とろいよぉ?！」
二人の声が重なるちうわけや。どうやら、おとんを待つ時間を持て余しとったようや。
今の二人には親と呼べる人はこのおとんしかおらへん。
「しゃーねーよ、寒いんだからよ？おんどれたちとちごてわしはもうこないな年やからなぁ?！」
やらなんやらとええつつも、その体つきはどエライ弱いもんとは思えへん元気な体をもつ。
「わいたちのとりえだもんね?、元気のよさちうのんは！ね？ホルム？」
「そうね、ビス。わてはそこまで元気があるっちうことを強調はせんけど・・・」
二人は同日に生まれた姉弟や。この世に生をうけたその日から、いつでも一緒。
ホンマに、仲のよい二人、喧嘩はしたかて心から嫌いあったことやらなんやらまるっきしへんかった。
そやけど、二人だけで生きてきたわけとちゃうんや。
二人にとってみなの面におけるぜぇぇぇったい的な信頼を置ける存在・・・
おとんのカッシュの存在が、今の二人を支えとる。
「さぁ、行くぞ！動かな寒うてかいなわんわいちうわけや。」
カッシュが二人を促す。それを聞いた二人が我先とおとんに駆け寄ったちうわけや。
「わーい！うん、はよいこ?！」
ここそやけど、二人の声は重なりよった。やっぱり双子とぬかすんはそないなもんがあるんやうや。
さらに二人はまだまだ幼いちうわけや。行動の差は性別による違いだけやった。

３人の今日の行き先は、ヒュリ峠。
３人の住む家からはちびっと遠いが、今回はカッシュがよりどエライ昔より行くことを決めとった。
やから、ホルムとビスには何故今日ヒュリ峠に行く必要があるんか分からへんかった。
なんでやったらヒュリ峠は曰く付きの土地。
今でも聖地と呼ばれるトコロで、幾つかの伝説の残るトコや。
遊ぶには適しておらへんし、かというて伝説やなんて所詮は伝説。
今となっては信じる者もおらへん。やから不気味でしかいないちうわけや。
遠くさかい見ても、異様な雰囲気の包む木々に囲まれた場所や。
しゃあない、もちろん手入れする人やらなんやらいまはおらへん。荒れ放題やった。
そないな地に赴く者やなんて、命知らずのトレジャーハンターや財宝荒らしだけや。
もちろん、宝やなんてあるちう保障もへんが・・・。
ほな何故カッシュはこの地に向かっとるんか？
実はそれには理由があったちうわけや。
それが、これからの３人の生活を大きく変えるもんやと、カッシュは知っとる。
やけど、そら使命やった・・・。


「時が攻めて来よったわ・・・」
女性が一人、暗黒の空を見上げとる。
そのまなざしは、空を見つめとるのやなく、空ちう空間を感じ取っとるように見えるちうわけや。
「この日のために・・・わてたちはそれぞれの道を歩んや・・・ねぇ、カッシュ？」
右翼手をつよ握るちうわけや。腕は小刻みに震えたちうわけや。
「行くんやろか？」
いつのまにか暗闇から男が現れとった。声は若いちうわけや。が、その全貌は闇に包まれとる。
「当然よ。１０年前に、交わしたカッシュとの約束を果たしにね・・・。」
薄笑いを浮かべるちうわけや。
「これであんさんのこの１０年間の生活の意味、教えたることができるわ。」
「はい・・・。」
男はうなずくと、暗闇の中へ歩き出し、そのまんま消えていったちうわけや。
女性のほうは、暗黒の空に向かって何事か呟いたあと、空に手をかざしたちうわけや。
その瞬間、彼女の姿は闇と同化して消えた・・・。



二つの運命の歯車が、複雑にかみ合おうとしとった・・・・・。



続くっちうことで、次回へ。
ＴＯＰへ戻る